毎日のランチが御馳走
今週のお題「我が家のご馳走」
結局のところおふくろの味が一番、という記事が多そうなお題だ。
僕にとっての一番の御馳走も、母の作るハンバーグである。誕生日の夕食には、毎年ハンバーグと野菜スープをお願いしている。
しかし母の手料理なら、実はハンバーグよりもっと好きなものがある。
卵焼きだ。
これがどうやらおふくろの味だからとか、身内の欲目ではないらしい。
中学生の時、いきさつは忘れたが、お弁当に入っていたそれを友人に一切れ分けたことがある。卵焼きなんてわざわざ交換するようなおかずでもないだろうから、彼女がお弁当を忘れたか、時間がなくておかずを詰められなかったか、そういう理由だと思う。
翌日から、僕はお弁当の卵焼きをカツアゲされるようになった。
信じられるか、卵焼きだぜ? それが毎日、友人の誰かしらに奪われるんだぜ? お前ら自分のかーちゃんの作ってくれた卵焼きがあるだろ、人の弁当箱つついてんじゃ……いや、俺の大好物取ってんじゃねぇよ!
遊びに来た友人に食べたいものを聞いた母は、「メインは何でも良いけど卵焼きが食べたいです」と返されて困惑していた。卵を四つ使ったそれを、友人はとても幸せそうに食べてくれた。
母が作ってくれる弁当は、今も昔も基本的に茶色である。ミニオムライスだとかサラダだとか、女の子好きのする華やかなメニューなど存在しない。しかしカツアゲされる程度には美味しい、僕の毎日の楽しみだ。
働き始めて一年、僕は家事のほとんどを母に依存している。体力と時間に余裕が出来たら自分でやりなさいよ、分かってるよ、とはよく話している。
でもお母さん、お弁当の卵焼きだけはずっとお願いしても良いですか。その他のことは、なるべく早く覚えますから。