夜明けはいつになりますか

発達障害持ちゲームオタク、社会からドロップアウトするの巻

理解者は居なかったけれど

 黒バス脅迫事件の犯人の手記が興味深い。と言っても、このエントリ自体は事件とはあまり関係がない。


 彼の手記を読んでいて、子供の頃、アトピーや貧乏を理由に苛められる子が羨ましかったのを思い出した。
 僕も苛められっ子だったのだ。標的にされた理由は動作や話し方が変な不思議ちゃんだったから。
 変なことをするお前が悪い、この理論を振りかざす最強の加害者は教師である。彼らはいじめのあるクラス・学年という汚名を返上すべく、ことあるごとに僕の言動を矯正しようとした。しかし僕の場合は本人も悪目立ちを嫌っており、努力した上で変だったのである。目立たずに済む方法なんぞ今でも教わりたいと思う。
 だから病気や生まれが理由の、少なくとも人格の欠陥とはされず、正論が味方をしてくれる苛められっ子が羨ましかった。

 それでも踏みとどまれたのは、両親が理解者だったからだ。
 彼らがいなければ、俺はおかしいんだ、と性格を変える努力もしたかも知れないと思っていたのだけれど、この手記を読む限りそんなことはなさそうである。

 幸福なことに、僕には犯人の気持ちが分からない。
 ものの感じ方は発達障害を疑う程度には変わっているから、感覚を他者と共有できない苦痛は分かる。全ての行動はリスクヘッジであり、努力の結果として何かを得られるなんて思っていない、僕もそこには共感はできる。
 でも僕の場合は、両親が分かろうとしてくれた。結局共有出来ず終いになることが多かったけれど、頑張ってくれているのは分かった。親に恵まれ、中学に上がってからは師にも友にも恵まれ、オタクの出力趣味を持ってからは認めてくれる人もいると知った。

 僕がこの犯人みたいな人に出来ることは、残念ながら何もない。幼少期に固められた世界の見方を変えられる人間なんていないと思う。
 せめて僕は自分に子供が出来たら、あるいはそういうことに口出し出来る友人が子供を持ったら、彼の手記の内容を意識して話をしたい。

 ところで漫画家とは、一作ヒットしても次が駄作なら一発屋の烙印を押されてしまう職業であり、どれだけ売れていようと勝ち組の成功者とは限らない。また世間一般では、オタクが犯罪を犯してオタク関係のイベントがなくなった、くらいの認識しかされなかったように思う。
 もちろん犯罪行為自体も頂けないが、動機に対して標的の決め方を誤ったのではないかしら、と苦言を呈しておきたい。誰が標的でもダメなものはダメだけどね。