夜明けはいつになりますか

発達障害持ちゲームオタク、社会からドロップアウトするの巻

呼吸の教え方

 僕は天性の運動音痴だ。

 登り棒にはついぞ登れるようにならなかったし、跳び箱には正面衝突するし、逆上がりも側転も出来ない。キャッチボールは基本顔面で受け止める。よって体育の成績は常に五段階評価の2と3を行き来していた。体を壊した後は授業は見学になってしまったから、悪化こそすれ改善はしていないだろうと思う。

 そんな僕は体育の先生という存在について、昔から猜疑的であった。

「ほらバランス取って!」

 それが出来ていればそもそも平均台から落ちたりしないのである。つまりこの言葉は、指導どころか助言の役割すら果たしていない。最初から無意識に出来ている学生にとっては尚更意味がない。

 呼吸の仕方を説明出来る人間はいないだろう。まずは吐いて、横隔膜を引き下げて、という指示はパニックで呼吸が出来なくなっている人には有効だが、そもそも呼吸の仕方を知らない相手に「肋骨の間に空気を送るように」なんて伝えても通じるまい。
 体育の先生には元々運動が得意な人が多いはずだが、呼吸のごとく無意識にやっていることを他人に教えられる人間がどれだけいるというのか。それはすげぇ難行であると、僕は思う。と言うか無茶である。

 教わるなら、僕は運動音痴の体育の先生に当たりたかった。苦手だったことを人に教えられる程度まで克服した人がいるのなら、それは教科を問わず、そもそも勉学に限らず、誰もが真似を出来る素晴らしいお手本のはずだから。