夜明けはいつになりますか

ゲーム畑在住アラサーオタク女、ニートからの社会復帰一年生による思考記録。

僕の一番の悪友様。

 とても大切な友人がいる。出会ったのは15年も前だ。彼女は中学校の始業式の日の教室で、新品のノートにアニメのキャラクターを描いていた。僕はてんで絵が描けない子供だったので、凄いなぁ、上手だなぁ、と感心しながら彼女を見ていた。

 出席番号の関係でたまたま隣の席だった彼女が僕のことを好いてくれた理由は、未だに謎のままだ。僕が体を壊して学校に行けなくなって、留年してクラスどころか学年も違ってしまって、大学も別々のキャンパスで、オタク同士なのに趣味は微妙に噛み合っていない。僕から彼女に連絡を取ったことはなかった。どうして友達付き合いが続いたのかと不思議に思う。それでも彼女は電話をくれて、メールをくれた。ブログなら引きこもりでも交換日記が出来る、と笑った。今でも互いに、仕事の隙あらばという感じで遊んでいる。

 でも、僕が居なくなっても、彼女は少し悲しむだけで何も変わらないだろうと。ずっとそう思っていた。

 本当にひどい間違いだ。僕が撤退してしまった教室という戦場で、彼女は卒業まで戦い抜いた。一人ぼっちが当たり前の環境だった僕よりも、絶望的な孤独がそこにはあった。周りに人がいないわけじゃない、友達だっていないわけじゃない、それでも誰にも心を開けない。なんていじましいんだろう。助けを求めて電話を掛ける相手が僕だった理由は、やっぱり思い当たらないままだけれど。
 いつも声を掛けてくれるのですっかり忘れていた。彼女は中学校の最初の日、周りの子に話し掛ける勇気が出なくてノートに絵を描いてしまうような女の子だった。

 彼女から差し伸べられた手は、救済の蜘蛛の糸ではなかったのだ。内気な彼女は僕以外の人間にその手を伸ばせなかったのだと、他でもない僕の存在を求めていたのだと、僕はずっと気付かずにいた。僕が握り返さなければ彼女の手も空虚なままなのだと、気付けないでいた。どうして僕にと首を傾げる前に、彼女も僕にとっては必要なひとだと、伝えなければいけなかった。
 最近ようやくそうと気付いて、僕は今、彼女に何かしてあげたくて仕方がない。その手を握り返すだけじゃなく、花や手紙や、彼女が喜びそうな全てのものを渡してあげたい。15年という月日の重みがずっしりと肩に掛かる。僕はその間、彼女に何を与えたというんだろう。

 困ったことに今、15年分の感謝の気持ちを受け止め切れる器が思い付かなくて、とりあえずは15年くらいは使えるアクセサリーを贈ろうと考えている。その程度は許されるであろう、人生の大きな節目を迎える君へ。
 僕が友達と呼んで貰える限り、いつか友達ではなくなっても、君の人生に幸多からんことを。