夜明けはいつになりますか

発達障害持ちゲームオタク、社会からドロップアウトするの巻

ハロウィンの仮装とオタクのコスプレ

 渋谷でのハロウィンの様子が、オタクの間で物議を醸した。
 仮装のお祭り騒ぎがテレビ等で好意的に取り上げられる一方で、翌日の路面はゴミだらけ、公共のトイレの洗面台には血糊の跡、という有り様は報道されない。コミケ会場のオタクのコスプレは面白半分、悪意がもう半分で晒し者にされるというのに、何だこの違いは!という話である。

 オタクとコスプレは切っても切れない関係にある、というのは言わでもだろう。
 この記事で言及するオタクによるコスプレは、いわゆる夜のコスチュームプレイとは別のものだ。いい大人による本気のごっこ遊び、写真を撮影してのポートレート作成、非日常的なデザインの服を作るのが好き、多様な動機により架空のキャラクターの服装を真似る行為を指す。
 コスプレに対してはオタクの中でも賛否両論がある。不細工なツラで俺が好きなキャラの服着てんじゃねぇ!だとか、はた目に痛々しくて同じオタとして恥ずかしい、なんて理由で非オタク以上に嫌っているオタクも多い。

 ゆえにコスプレを趣味とする人たち、コスプレイヤーの大多数は、理解者と同志以外に迷惑を掛けないよう努めている。
 衣装やメイクはイベント会場の更衣室で整え、コスプレと分かる状態での来場、退場、一時退出は絶対禁止。武器などの目立つ小道具はそれと分からないように梱包して持ち込む。会場内でも女装、露出の多い衣装、流血系メイクは許可されているイベントの方が少ない。
 一方でインナーやベースメイクなど、外目にコスプレと分からない準備は極力自宅で済ませておくのが暗黙の掟だ。更衣室を占領する時間を最小限に抑えるのは参加者同士の当然の気遣いであり、トイレでのメイクもご法度である。
 こうした自治ルールに反する者は、良識あるコスプレイヤーからは白い目で見られる。度を超した違反者はイベント運営元のブラックリストに載り、イベントへの参加を拒否されることもある。
 それだけやってもコスプレへの風当たりは強いのに、なんでハロウィンの仮装は迷惑まで掛けておいて許さるれんだ? 理不尽に感じる気持ちはよく分かる。

 来た時よりも美しく、非オタクさんのヒンシュクを買わないようにね、というのはコスプレに限らずオタク系イベントの大原則だ。これを守らない人はやはり非難されるし、会場のゴミ程度ならスタッフが出るまでもなく他の参加者が尻拭いをする。
 日陰趣味ゆえに「問題を起こしたら次が開催出来ないかも知れない」という意識が働くのだろうか? 恐らく、それだけではない。

 もちろん全員というわけではないが、オタクは往々にして真面目である。と言うかいい加減なことが苦手な人が多い。
 例えば、会話下手なオタによく見られるパターン。会話の中で相手を褒めたい時、最適な褒め言葉を頭の中で探してしまい、「これじゃない、これでもない」と混乱して結局何も言えない。ピンチの時のドラえもんが四次元ポケットからあれこれ放り出すのに適切な道具が出て来ない、あの状態に似ている。「へぇーすげぇー」とでも適当な相槌を打って会話を続けた方が良いのだが、その「適当な相槌」が苦手なのである。
 臨機応変な会話は苦手、自分のペースで理解出来る本が好き、じっくり言葉を選んで推敲出来る文章での発信が得意。オタクだからそうなるのではなく、そういう性質の人がオタク趣味に走る。
 無駄な真面目さは「いい加減な奴は許せない」という価値観と表裏一体だから、街頭で騒ぐような人とは趣味以前の部分でそりが合わないのかも知れない。

 許せないと言っても攻撃する意思はないのだ。きっと仲良くは出来ないなぁ、公共の場でのマナーは考えて欲しいなぁと思うくらいで、お祭り騒ぎを咎めるつもりもなかろう。
 ただしそれが許容されるなら、マナーに難ありでもお咎めなしとなれば尚更、無害なオタクのコスプレは放っておいてくれないかマスコミさんよ……というのが今回の騒ぎの正体じゃないだろうか。