目指せなくなったポケモンマスター
アニメ「ポケットモンスター」が終わってくれないかなーと、かれこれ5年くらい思っている。
嫌いなのではない。好きだからこそ、終わって欲しいとずっと思っている。
初代アニメ主題歌「めざせポケモンマスター」は、そのままゲーム内の目標を踏襲していた。
♪きたえたワザで勝ちまくり 仲間をふやして次の町へ
各地に出現するポケモンを集めながら、気に入ったポケモンを鍛えてポケモンリーグでの優勝を目指す。「ポケモンマスター」とはリーグ優勝を果たし、全てのポケモンのデータを図鑑に登録した者に与えられる称号だった。
しかし人気が出たのがいけなかった。いや、ポケモン人気自体は喜ばしいのだが、アニメの主人公であるサトシを交代させずに続けてしまったのはいけなかった。
アニメが続く限り、サトシ少年は旅を続けざるを得ない。旅の目標であるはずのポケモンマスターには決してなれない。図鑑をどれだけ埋めても、ピカチュウのレベルが999を超えても、アニメが最終回を迎えない限りは永遠に。
♪ユメはいつかホントになるって だれかが歌っていたけど
つぼみがいつか花ひらくようにユメはかなうもの
あの、サトシ君の夢の蕾はいつ開くんですか。15年追っても叶わない夢はあるという世知辛い現実を子供に教えるアニメなんですか。そうじゃないのなら夢を叶えさせてあげて? ポケモンマスターになっちゃったらお話も終わってしまうのは分かるけど、じゃあ終われよ、終わらせてやれよ!
マスコットキャラクターの「ピカチュウ」が降板出来ないのは分かる。だが、原作ゲームには自分のポケモンを他人に受け渡す「交換」という要素もある。ポケモンマスターになったサトシが、冒険を続けたい、まだ見ぬ強敵と戦いたいというピカチュウを新人トレーナーに託す──そういう筋書きにも出来たはずなのだ。
ポケモンBWは一つの転機だったと思う。ゲーム発売の際には最初のパートナー以外のポケモンの情報は伏せられていた。アニメのオープニングでは全てのポケモンがシルエットとして描かれ、本編に登場したものから順次色を着けて見せるという仕掛けがあった。旅の仲間もデントとアイリスというゲーム中のジムリーダーとなり、それぞれ人種にも配慮したのかなぁ……という意味でも好感が持てた。
そこまでやっておいて、何故サトシだけ交代させてあげなかったんだろうか。
絶対に叶わない夢を追い続け、成長を止めてしまった主人公を見ているのは、正直辛い。切実に、早めに、終わってあげて欲しいアニメである。